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①原理・研究法・歴史 ミルグラムの服従実験

ミルグラムの服従実験

1960~1963年にかけて実施された「スタンレー・ミルグラム」による実験。この実験では「権威のある人間の倫理的にマズイ命令に、人間はどれだけ従うのか」を測定するために行われた。別名「アイヒマン実験」

 

時代背景:あのナチス政権が滅んだ直後、ユダヤ人虐殺に深く関与した「アドルフ・アイヒマン」は非常に恐ろしい気質を持った人間だと考えられていた。しかし裁判の場に姿を現したアイヒマンは、よくいるお役所の人間。基質に大きな異常性は認められなかった。

 

多くの人間はそれでも「アイヒマンは何か異常な人間で、我々とは違う」と考えた。しかしミルグラムや一部の人間は、誰もが「ただ純粋に命令に従っただけのアイヒマン」になりうる可能性があると主張した。ミルグラムの服従実験の結果は、この主張を裏付けるものとなった。

手順

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広告で実験の参加者を募集。主に地域の一般住民が協力した。実験の名目は「記憶実験の参加者の募集」。悪く言えば「騙した」事になる。これが後々物議を醸す。

 

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当日、実験の会場に行くと「同じ実験に参加する相方」を実験者が紹介する。

 

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ところがどっこいこいつはサクラ。

 

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裏方で既に打ち合わせ済み。要するに「グル」

 

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くじ引きの結果、一般人は教師役となった(細工済み、絶対に一般人が教師役、サクラが生徒役になる)。壁の向こうには生徒役(サクラ)がいる。教師役は生徒役に問題を出し、生徒が間違えたらバツとして「電気ショック」を与える。「バツが学習能力を向上させるのか調べる為に(大嘘)」

 

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生徒が間違えるたびに、電気ショックの強度を上げるよう実験者(権力者)から指示される。しかし壁の向こうの生徒の様子がおかしい。明らかにヤバそうだが実験者は「実験を続けるように」求めてくる。

 

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実験者が「4回実験の続行を求める言葉」をかけても教師役が電気ショックを実行しなかった場合、実験は終了となる(実際には4回とも違う定形言葉)。電気ショックの強さは計30段階。教師役は「どの強度まで電気ショックを実行してしまう(権力者に従ってしまうのか?)」

 

結果

~実験前~

ミルグラム「こういう実験やるんだが、どの段階まで一般人は電気ショックを実行すると思う?」

精神科医たち「殆どの人間は、サクラが『実験中止してくれ』って言うレベルの150Vで止めるだろ。大体70%は降りるだろう」

 

~なお現実~

最終段階の450V(設定上命にバリバリ危険がある)まで電気ショックを実行した人間は62.5%。150Vで止めた人間は15%程度だった。参加者はごくごく普通の一般人。これにはミルグラムも唖然。ミルグラムの予想を超える人間が、最後まで命令に従った。

 

我々は一般的には、人を傷つけることは良くないことだと知っている。性格や基質(内的要因)ではこの結果は説明出来ない。ミルグラムは「状況の力(外的要因)」の存在を唱えた。我々は外的要因を軽んじ、内的要因に帰属しすぎる傾向がある。

 

例:あいつが遅刻したのは、時間にルーズだから(内的要因)に違いない。

(なお実際には電車が大幅遅延していた:外的要因)

これを「基本的な帰属のエラー」という。帰属は原因帰属の意味。

 

倫理的問題

この実験でミルグラムは一般人に「記憶のテスト」と嘘の実験の名目を伝えている。なお実際には「権威への服従テスト」。つまり参加者に嘘をついた事になる。これが現代の心理学実験としては一発アウトレベルにヤバイ。当時は割と倫理的な規制が緩かったんで許されたが、それでもミルグラムの実験は集中砲火を浴びた。実験参加者の人権大事。

 

しかし「嘘の名目を伝えないと実験結果が得られなかった」のも事実。現在ではここまで実験参加者に心理的な負担を与える実験を禁じると同時に、参加者に虚偽の名目を伝える必要がある実験の場合、参加者への適切な説明とフォロー「デブリーフィング」が義務づけられている。

 

その後

ナチス滅亡から40年程経ち、人々が「流石にこの実験はナチスの事件の直後に行われたもので、現代の我々には当てはまらない」と考え始めた2006年。心理学者のバーガーが追試の実験を行った。倫理的規範に違反しないように内容を変えつつも、ほぼ同様の結果が得られた。

 

余談

ミルグラムは計19種類の服従実験を行っている。最後まで命令に服従する確率(服従率)は最も高いもので92.5%。最も低いもので0%

 

服従率の低かった実験…教師役と生徒役の距離が近い、生徒役の苦しむ様子が直に見える、生徒役を直接電気ショックの発生装置に押さえつける必要がある。

 

感想

社会心理学で最も有名といっても過言ではない実験。メディアにもたまに引用される。この実験が示したことは


1.状況によっては人間は残酷な命令にも従う。

メディアで取り上げられる場合には、1が強調されがちだが、他にも重要な点がある。


2.人間は原因を内的要因に求めやすい。

人間の行動は、本人の気質(MBTIやエニアのタイプもここに含まれる)によるところよりも、状況による影響の方が強い。しかし人間は状況の影響を正確に測る事が出来ない。


環境が変われば人は変わる、というのはこの実験から見ると真実だろう。


3.デブリーフィングの重要性

賞賛と非難を轟々に浴びまくったこの実験、倫理規範をどうやってクリアしつつ実験を行うか、という所で心理学者の発想力が問われる。その点、後続のバーガーは上手いこと考えた。


4.状況によっては、人は権力者の命令に抗える。

ミルグラムの実験を取り上げるなら、これも一緒に取り上げてくれと思う。一部の実験の服従率は0%、参加者全員が従わなかった。


アイヒマンは、丁度服従率の高い実験と類似する状況だったと個人的に思っている。人間怖いわーと言うのは極論で、服従率の高い環境を作らない事も重要。


性格診断に話を繋げると、MBTIやエニアで説明できるのは内的要因だけで、行動への影響の大きい外的要因は説明できない点が重要だと思われる。